Faylay~しあわせの魔法
人の王が惑星王、精霊の王が精霊王。そして、魔族の王は魔王……。

自分たちを狙っているのは、そういう、とてつもなく大きな存在だったのだ。



フェイレイはジッと勇者の像を見上げる。

セルティア生まれの彼は、何を思ったのか、家族を残して北の大地へと渡り、大国アライエルで騎士団長へと登りつめた。

その後、魔族、精霊と起こした世界大戦を終結させ、『姫』を塔から助け出し、そのまま行方不明になったという。

この打ち捨てられたとも言える廃殿の中で、人知れずアライエル国を見守っている彼は今、何を思っているのだろう。

次々に消えていく国を、命を、愁いているのだろうか。

「……あんたなら、どうする?」

惑星王を乗っ取り、人々を苦しめ、世界を崩壊させようとしていて、尚且つ、フェイレイの一番大切な人を連れ去ろうとしている魔王。

「逃げずに、立ち向かう?」

逃げ続けていても、魔王が世界を崩壊させようとしている限り、安全な地などない。

ならば……。

世界の人々のために、立ち上がる?

けれどそのリスクはどれほどのものだろう。

魔族の王。

とてもじゃないが、ただの人間が敵う相手ではない……。


薄雲のかかる青空から降り注ぐ太陽の光だけが揺れ動く静かな廃殿の中、それぞれが目まぐるしく思考を巡らす。

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