Faylay~しあわせの魔法
「精霊王の愛娘、ティターニア」

「ティターニアって……精霊の女皇」

「そう。彼女の力は、父である精霊王に匹敵すると言われていた。その力を我が物にしようとした魔王に攫われてしまったんだ。……私は、彼女を助けてなどいないよ。……助けられなかった」

ランスロットは歯噛みし、拳を握り締めた。

「まさか……ティターニアも、いない……のか」

「彼女自身はいなくなった……はずなんだけれどね。でも感じるよ。限りなく彼女に近い存在が、君のすぐ近くにいる」

「え……そんな凄い力を持つ精霊が、近くに?」

フェイレイは精霊を召還することは出来ないが、幼い頃から周りにはたくさんの精霊たちで溢れていた。

その中にティターニアがいたのか?

思い返してみても、そんな莫大な力を持つ精霊には出会ったことがない。

「……恐らく、精霊の姿はしていないのだと思う」

黙考するフェイレイに、ランスロットは静かに語りかけた。

「彼女はもう、精霊としての姿は保っていられなかったはずなんだ」

「え、じゃあ……」


そのとき、部屋のドアをノックされた。

静かにドアを開けて入ってきたのはリディルだ。

「フェイ、イライザ姫が話があるって……」

ひょこ、とドアの隙間から顔を覗かせた彼女は、フェイレイの前に座るランスロットにはまるで気づかない様子だ。

そのことを不思議に思う間も無く、ランスロットは言った。

「やはり、彼女だ」

「……え?」

「彼女が、ティターニアだ」
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