Faylay~しあわせの魔法
驚きに目を丸くするフェイレイを、リディルは首を傾げながら見ていた。

「フェイ?」

リディルの呼びかけに、フェイレイはハッとしてリディルを見た。

「あ、うん、何だって?」

「イライザ姫が、話があるって」

「うん、分かった……」

「……フェイ、大丈夫? 疲れた? それとも、風邪?」

顔色の良くない彼を心配し、リディルは部屋の中へ入ってくる。

ランスロットがベッドを下り、フェイレイたちから離れたところへ移動していったが、やはりリディルは気づいていないようだ。

真っ直ぐにフェイレイのもとへ歩み寄り、ベッドに片手をついてフェイレイのおでこに手をやった。

「熱は、ないみたいだけど」

「馬鹿は風邪ひかないって」

フェイレイは笑みを浮かべながらも、頭の中では『ティターニア』の名前がグルグル回っていた。

リディルがティターニア?

確かに、彼女は精霊の女王を召還出来る。他の精霊士よりもずっと凄い力を秘めている。

けれどそれは人の王……惑星王の血筋だからだ。

その血に、精霊の女皇の力が宿ったとでもいうのか?

「リディル……」

フェイレイの惑うように揺れる深海色の瞳に、リディルは首を傾げた。

(駄目だ、リディルは何も覚えてないんだ)

母であるシャンテルの死、ヴァンガードの祖父の死、そして星府軍の非道なる行いに心を痛め、記憶を失ってしまっている彼女に、何を聞いても分かるはずがない。

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