Faylay~しあわせの魔法
ランスロットから聞かされた真実により、これからの敵の動向によっては逃げ続けるだけでなく、直接対決するという選択肢も出てきたのだ。

自分の中に流れる血に宿命付けられた、避けられないモノがあるのだとすれば。

戦うのもまた定め、だろうか。

セルティアの空でリンドブルムと対戦したときは、とてもではないがあの影に潜む力には到底及ばないものだと思っていた。

けれど、この身体に眠る『勇者の血』が目覚めれば、その力を手に入れることが出来れば……もしかしたら。

(みんなに話さないと。リディルのことも……)

彼女自身も知らない真実に胸を痛め、ついでに先程の出来事も思い出した。

聞かされた真実に心が震え、絶対に離さないとか、護り抜くとか、誰にも渡さないとか……様々な想いが駆け巡り、思わず手が出てしまったのだが。

あれは、リディルにとっては突然の出来事だったに違いない。

彼女にはランスロットの姿は見えていなかったし、声も届いていないはずだ。

リディルにとっては、いきなり手を掴まれ、抱き寄せられ、キスされた……ということになるのだ。

その事実に気づいたフェイレイは、サアッと青ざめた。

(何してんの俺! 何してんの俺──!!)

ゴツゴツと壁に頭を打ちつけるフェイレイを、ヴァンガードがギョッとしたような顔で見守る。

(でも)

壁に頭を打ちつけるのをやめて、あのときのことを思い出す。

想いを乗せて絡ませた細い指と、重なり合った柔らかな唇は、フェイレイを拒んではいなかった。

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