Faylay~しあわせの魔法
「そう? 分かりましたわ。でもやはり、濃い色よりは淡い色の方が、イメージに合うと思いません?」

「はい、よくお似合いです」

侍女たちは笑顔で頷いた。

淡いベージュやピンクなど、柔らかい色のドレスを両手に持ち、リディルに合わせる。

「あの……私は別に、いいですから……」

「何を言っていますの! 貴女が『勇者』にエスコートされるのですよ。私の意地とプライドにかけて、貴女の魅力を最大限に引き出してみせますわ!」

ね、と侍女たちを振り返ると、彼女たちもつられたように気合いの入った返事をする。

「それはもう、あの『勇者』様のお相手を務められるのですから。必ずや今夜の晩餐会で一番美しい姫に仕上げてみせます」

と、次々にドレスをあてがわれ、ああでもない、こうでもないと始まる女性たちの情熱に圧倒され、戸惑っているうちにドレスが選ばれ、髪も結い直される。

ピンクの頬紅にブラシを持つローズマリーに、それまでされるがままになっていたリディルが、やっと口を開いた。

「お化粧も、するの?」

「当然です」

「……なんだか恥ずかしいから、いい」

「美しく着飾るのは、大人の女性としてのたしなみですよ」

笑顔のローズマリーから逃げようと腰を上げると、ぐっと肩を押された。

「大人しく座っていなさい。悪いようにはしませんわよ」

目の前にある綺麗過ぎる笑顔に、悪寒が走る。

どうせ力では敵わないのだ。リディルは諦めて好きにさせることにした。

そして、ヴァンガードを女装させたときのことを思い出し、彼もこんな複雑な気持ちだったのだろうか、悪いことをしたな、と反省するのであった。

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