Faylay~しあわせの魔法
パタリと仰向けに転がって、藍の天蓋を見上げる。

「どうしましょうか、ね……」

ローズマリーは迷っていた。

このまま愛しい人の妹を、傍で護り続けるか。

それとも、正体が明らかになった敵から、夫を救いに戻るべきか──。

「このことを、知っているの? アレク……」

目を閉じて短い黒髪に鋭い眼光を放つ幼馴染の姿を思い浮かべ、問いかけてみる。

だが、問わなくても答えは分かっている。

答えは、イエスだ。

「なんでいつも、言ってくれないの……!」

目を手の甲で覆い隠し、歯噛みする。

いつも大事なことには気づけない。

カインの異変も、アレクセイの異変も、気づけなかった。気づいてはいても何もしてやれなかったのだから、気づいていないのと同じなのだ。

「言われないと分かんないんだよ、お前の気持ちなんてっ……」

リディルに言った台詞は、本当は。

彼女の大切な人たちに、言ってやりたかった言葉──。



< 508 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop