Faylay~しあわせの魔法
自分たちに用意された部屋へと続くドアが開け放たれ、侍女が2人、フェイレイとヴァンガードに向かって頭を下げた。

リディルたちの支度も整ったことを察し、フェイレイは壁から背を離し、ヴァンガードは椅子から立ち上がった。

待ちに待ったリディルのドレス姿。

2人とも胸を躍らせながら、リディルが扉から現れるのを見守っているのだが、なかなか姿が見えてこない。

そのうち侍女たちが扉から離れて奥に姿を消し、「大丈夫ですよ」「頑張って!」などという声が聞こえてきた。

やがて侍女の姿が現れ、その手に引かれるようにふわふわとした白いドレスが見えてきて……リディルが現れた。

腰から裾にかけてふわりと広がるプリンセスラインの白いドレスは、スカート部分は幾重にも重なる、ごく薄いピンク色のオーガンジーで覆われている。

それと同じ色の大きな花が、左の胸元とスカート、そしてハニーブラウンの髪の上にも咲いていた。

結い上げられた髪は緩く波打ち、フェイレイとヴァンガードに見つめられて恥ずかしくなり、俯き加減になった頬の上に一房落ちた。

「……綺麗、ですよ」

顔を綻ばせたヴァンガードが、そう声をかける。

「……そう、かな。ありがとう」

リディルはチラ、とヴァンガードの顔を見ただけで、また下を向き、礼を言う。

そこから動こうとしないので、侍女たちが「さあ、さあ」と背中を押し、手を引いてフェイレイの前まで連れて行く。

フェイレイはゆっくりと歩いてくるリディルを、瞬きをすることも忘れて見つめていた。

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