Faylay~しあわせの魔法
イライザ姫の提案に、周りからは更に拍手と歓声が沸きあがった。

「それは素晴らしい!」

「では神父様も呼んでこなくては」

侍女たちがそう囁きあいながらわたわたと動き出すのを見て、リディルが慌てて止めた。

「それは、駄目」

「え、駄目なの?」

このまま流れに任せてもいいかな、なんて思っていたフェイレイは、少しガッカリしたのだが。

「だって。……父さんと母さんに、ちゃんと言ってからにしたい、よね?」

優しい笑みを浮かべてそう言うリディルに、フェイレイは胸が熱くなるのを感じた。

ああ、やっぱり。

この子を選んで良かった、と。

「ありがとう。リディル、大好きだー!」

がば、とフェイレイに抱きつかれて、リディルは慌てて胸を押し返した。

「みんな見てるから!」

「もういいよ。全部見られたんだもん」

「そういう問題じゃ……」

フェイレイは構わずリディルを抱きしめ、「好きだよ」と囁く。

今まで気持ちを押さえ込んでいた分──周りにはそうは見えていないのだが、本人はそのつもりなのである──こんな風にちゃんと伝えられることが嬉しくて堪らなかった。

そんな2人を、周りも祝福する。

ヴァンガードも、苦笑しながら見守る。

ここまで見せ付けられると、悔しいとか、哀しいとかいうよりも、ただ呆れるしかなかった。

< 513 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop