Faylay~しあわせの魔法
「父さんと母さんのとこに帰ったら、結婚式しよう」

「うん」

「ビックリするかな」

「……どうかな」

「殴られるかな!」

「ふふ」

一般家庭では、殴るのは父親の役目であるが、グリフィノー家では母がその役割を担っている。

アリアの怒り狂う顔を思い浮かべ、2人は笑った。

そうしていると、大広間から楽師たちの奏でる、弦楽器の美しい音色が聞こえてきた。

祝宴の場に相応しい、華やかな円舞曲。

窓の向こうで紳士と淑女が手を取り合い、優雅に舞うのを見たフェイレイは、リディルから手を離し、一歩退いて左手を差し伸べた。

「一曲踊っていただけませんか、姫?」

リディルはその手を、微笑みながら取る。

「今日は良く笑うね」

音楽に合わせてステップを踏みながら、フェイレイは嬉しそうに言った。

「そうかな。……そうだね」

「なんで?」

「……しあわせ、だから」

「しあわせ?」

「うん。私ね、フェイに出会えたことが、一番、しあわせだよ」

かわいらしく微笑むリディルに、フェイレイは少し照れた。

「そ、そか。うーん、でも。俺に出会えたことが一番じゃ駄目だよ。これから一緒に、もっとしあわせになるんだ」

「……そっか」

「そう!」

一曲だけのダンスを終え、2人は穏やかな顔で見つめあう。

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