Faylay~しあわせの魔法
ヴァンガードが目を見開く間もなく、フェイレイはドラゴンに突っ込んでいった。

「無茶です! 1人でなんて!」

そう叫んだが、岩に足を挟まれて身動きが取れないヴァンガードには、フェイレイを止めることは出来ない。



足を踏み鳴らし咆哮を上げるドラゴン。

フェイレイはその背後に回ろうとするが、それ以上にドラゴンの動きが速い。

見上げる位置から、自分の腕の長さほどの爪を持った手が襲い掛かってくる。

それをギリギリでかわすと、襲い掛かってきた腕に飛び乗った。

硬い鱗を蹴り、ドラゴンの眼前まで飛び上がる。そうして頭上から剣を叩き付けた。だが硬い鱗は簡単に剣を弾き返してしまう。

「通常攻撃は利きません! 目を狙ってください!」

岩に足を挟まれながらも、ヴァンガードは叫んだ。

「目、だなっ」

頭上のフェイレイを払おうと、ドラゴンが口を開けて鋭い牙を覗かせた。赤黒い口の中に吸い込まれたら大変だと、慌てて離れたところに着地する。

そこに、ブウンと低い唸り声のような音を立てて尻尾が襲い掛かってきた。避ける暇がなかったため剣で防いではみたものの、思いきり横の岩壁に叩きつけられた。

「フェイレイさん!」

ヴァンガードは身をよじり、なんとか大腿のホルスターに手を伸ばした。

魔銃を引き抜き、崩れて山となった岩の隙間からドラゴンを狙う。

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