Faylay~しあわせの魔法
セルティアでも、オースター島でも、星府軍の追撃はどこか詰めが甘かった。

それは皇后であるローズマリーが人質同然にいるからなのかもしれないと、思っていたけれど。

リディルを無傷で捕らえなくてはならないのだとしたら、それも納得がいった。

「そうかもしれませんね。だとすると、ますますリディルを皇都へ連れて行くことは出来ませんわ」

「僕はローズさんが皇都へ行くのも反対です」

ヴァンガードは軽くローズマリーを睨む。それに対し、ローズマリーは柔らかく微笑んで返した。

「ご心配ありがとう。でも、カインは私の大切な人なのです。だから、行かなくては」

「でも……惑星王にとり憑いている魔王をどうやって引き離すおつもりですか? 打開策が見つかるまでは、近づくのは危険です!」

何とか止めようとするヴァンガードに、ローズマリーは困ったように眉尻を下げた。

この小さな護衛官の言うことも、心配してくれる気持ちも理解しているつもりだ。だが、それ以上に大切で愛しい存在がある。

「それでも行きます。貴方はしっかりと、リディルを護ってくださいね」

「ローズさん……!」

ローズマリーとヴァンガードのやり取りを聞いていたリディルは、決意を固めた瞳でフェイレイを見た。

「私も行く」

「リディル……」

本音を言えば、リディルを安全な場所に隠しておきたい。そしてそれを傍で護っていたい。

けれど……。

「確かに、元凶を絶たなければ何も解決しないんだよな」

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