Faylay~しあわせの魔法
「フェイレイさんまで何言ってるんですか!」

椅子から立ち上がってそう怒鳴るヴァンガードを、目で制する。

「ヴァンの気持ちも分かる。ありがとう、心配してくれてんだよな。だけどやっぱり……魔王は倒すべきだ。リディルのためにも、惑星王のためにも……世界のためにも」

フェイレイはギュッと拳を握り締める。


そうだね、と頭の中で声がした。

ランスロットだ。

世界のために魔王と戦った彼の気持ちと、フェイレイの気持ちが同調し、護りたいという気持ちが大きく膨れ上がっている。

本当の意味で護るためには、このまま逃げていても駄目なのだ。


「……精霊が、いないの」

リディルが哀しげに、雨の降り続く窓の外を眺める。

「昨日から……ずっといない。戻ってこない。……いないのに、雨が降ってる」

その言葉に、全員がハッとする。

精霊が姿を隠し、自然界の秩序が乱れることは、10年前の再来なのである。

人の悪意に同調して増えすぎた魔族に恐れ、精霊が姿を消す。その結果、世界中を襲う天変地異がやってくる。

「この雨は、天変地異の前触れだと思う。もう世界は崩壊に向かってる。……止めなくちゃ」

「ですが……」

それでも心配そうなヴァンガードに、リディルは微笑みかける。

「大丈夫。……私が本当にティターニアなら、きっと、私が惑星王を助けなくちゃいけないの」

「それで俺が、そんなリディルを助けるの。俺、本当に勇者の末裔みたいだからさ」

フェイレイも微笑む。

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