Faylay~しあわせの魔法
戦艦の砲撃台が急接近する青い機影を捉える。そして主砲はヴァルトの街へと向けられた。

兵士たちは迷いながらも砲撃を開始する。

主砲も発射された。

だが──。

それらが宙に向かって飛んでいくことはなかった。何故だか砲弾が発射された瞬間に、そこで大きな爆発を起こして砲台が次々と破壊されていった。

「なんだ……!?」

オペレーターの目に、砲筒の先を包み込む、何か透明な膜のようなものが見えた。

「あの膜は、一体……」

「……ウィスカだ。ジュエヴェも力を貸しているか」

アレクセイは微笑んだ。砲筒はあらかた、水の膜で覆われてしまっていた。あれに阻まれて戦艦は砲撃による攻撃が出来ないでいる。

「皇女殿下か。さすがです」

そう言っている間に、急接近してきた飛行艇から何かが落ちてきた。その何かから、凄まじい斬撃が飛んでくる。

「……伏せろ」

アレクセイが静かにそう言うのと同時に、管制室の上部が雷鳴のような音をたてて吹き飛んだ。

艦はちょうど停泊している状態だったので、兵士たちが空に投げ出されるのはなんとか免れたものの、舞い込んでくる風に誰も動けなくなる。

アレクセイ以外は。

「来たか」

彼は更に嬉しそうに笑みを漏らす。視線の先には、赤い髪を靡かせて宙を落ちてくる、『勇者』の少年がいた。

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