Faylay~しあわせの魔法
赤髪の少年、フェイレイは穴を開けた天井からストンと管制室に下り立ち、段上の椅子に手をかけて立つアレクセイを睨み上げた。

「おい! 今の話は本当か!」

ローズマリーとの会話は、フェイレイも飛行艇の中で聞いていた。

けれど、アレクセイの言うことは矛盾している。それくらいはフェイレイにも分かった。

「あんたの言うことは信じられない! 本当のことを話せ!」

その真意を量りたい。

彼を信じる、ローズマリーのためにも。

それは周りにいる兵士たちもそうだったのだろう。敵であるフェイレイが登場しても、誰一人、彼を攻撃する者はいなかった。

アレクセイは冷ややかにフェイレイを見下ろした後、ゆっくりと彼のもとへ下りていった。

「真実か。君にとって大事な真実は……セルティアを崩壊させ、魔族の住処へと変えてしまったということだろうか」

「……何?」

「今やセルティアは、人の住めるような土地ではない。果たして、何人生き残っているかな?」

「……お前!」

フェイレイは思わず腰の後ろの剣に手をかけた。それを見てアレクセイは唇の端をあげる。

「甲板に出なさい。ここではお互い、実力を発揮出来ませんからね」

そう言ってフェイレイの横を通り過ぎながら、彼はフェイレイの実力の程を計っていた。

──まだだ。

まだ、足りない。

彼の本当の力を引き出すには──。




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