Faylay~しあわせの魔法
思うように攻撃が出来ず、飛行艇はただ空を旋回し、戦艦も沈黙している。

ただ、地上へ降りてくる飛行艇だけはリディルだけではどうにも出来ず、そのうちに地上戦が展開され始めた。

街への侵攻を防ぐべく、護国の兵士たちが奮闘する。

騎士団は民衆の避難を急がせ、アライエルギルドからも応援が駆け付けた。

今のところ、力は拮抗している。あとはフェイレイがこの軍団を動かしているアレクセイをどうにか出来れば勝敗は決する。

しかし、そう簡単にはいかない。

何しろ相手は、世界一の剣士なのだから。



吹き飛んでくる雨粒のひとつひとつが、スローモーションに見える程の速いスピードの中で展開される攻防戦は、見守る兵士たちが瞬きを忘れてしまうほど熾烈を極めていた。

アレクセイの剣は、軍人が良く使っている半曲刀の片手剣だ。

刀身がフェイレイの身長ほどもある上に、アレクセイの長い腕で振られると、フェイレイは彼に近づくことも出来ない。

おまけに、速いのだ。

風を切る高い音を響かせながら、右から、左から飛んでくる剣戟を、辛うじてかわすことしか出来ない。

「く、っそ」

アレクセイの動きがまったく読めない。

ギリ、と歯噛みして速い剣と雨粒をかわすと、身を捻りながら後退し、左手に持っていた剣を変形させ、もうひとつ剣を引き抜いた。

「……二刀流ですか」

チャキ、と剣を構えなおし、アレクセイは冷静に2本に変形したフェイレイの剣を眺めた。

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