Faylay~しあわせの魔法
激しい光の渦に呑みこまれ、手足の感覚はもちろん、自分の存在すら見失ってしまいそうだった。
名を呼んだはずの少女の姿も、彼女を危険に晒す黒い存在も、空を埋め尽くす暗雲も、身体を叩く冷たい雨も、その渦の中にはない。
ただゴウゴウという音が、耳の奥でうねりを上げている。
その音に、だんだんと怒声が混じってきた。
(なんだ……)
それを不思議に思うことで、自分という存在を認識する。
この白い空間に『自分』が確かに存在していることを。
「う……」
短い呻き声を上げ、瞼を薄っすらと押し上げると、白い光の中に古い映写機に映し出されたような、二次元空間が広がっていた。
色のない、白黒の世界。
その中で見も知らぬ中年の男性が、髪を振り乱し、鬼のような形相でこちらに向かって怒鳴っていた。
何をそんなに怒っているのか……ぼんやりとしたままそれを眺めるフェイレイの耳に、ざらつく音声が響く。
オソロシイ
オマエノヨウナコガ
ワタシノムスコノハズガナイ
ゾクリとするような、嫌な言葉。
呪いの言葉は、口にするだけでその力を発揮するものだ。ナイフのように鋭く胸を突き刺される。
名を呼んだはずの少女の姿も、彼女を危険に晒す黒い存在も、空を埋め尽くす暗雲も、身体を叩く冷たい雨も、その渦の中にはない。
ただゴウゴウという音が、耳の奥でうねりを上げている。
その音に、だんだんと怒声が混じってきた。
(なんだ……)
それを不思議に思うことで、自分という存在を認識する。
この白い空間に『自分』が確かに存在していることを。
「う……」
短い呻き声を上げ、瞼を薄っすらと押し上げると、白い光の中に古い映写機に映し出されたような、二次元空間が広がっていた。
色のない、白黒の世界。
その中で見も知らぬ中年の男性が、髪を振り乱し、鬼のような形相でこちらに向かって怒鳴っていた。
何をそんなに怒っているのか……ぼんやりとしたままそれを眺めるフェイレイの耳に、ざらつく音声が響く。
オソロシイ
オマエノヨウナコガ
ワタシノムスコノハズガナイ
ゾクリとするような、嫌な言葉。
呪いの言葉は、口にするだけでその力を発揮するものだ。ナイフのように鋭く胸を突き刺される。