Faylay~しあわせの魔法
(なんて酷いことを……)

他人に向かって放たれたはずの言葉でさえ、胸の中に澱として残る。言われた本人は、どれだけ辛かったことだろう……。

その痛みに共感し、眉を顰めていると、白黒の世界で中年の男性が腕を振り上げ、誰かを殴りつけるような恰好をした。

何度も、何度も男は腕を振り上げる。

(やめろ!)

誰を叩いているのかなど、フェイレイは知らない。

けれどそれを止めようと手を伸ばした。

だがそれはスクリーンの中の世界。どんなに手を伸ばしても届くことはない。


やがて、スクリーンの中には違う人物が映る。

小さな子ども、少年少女、そして大人たち。

たくさんの人々が遠巻きにこちらを見つめていた。決して近づくことはなく、ただ、疎ましげに。


場面が切り替わり、最初に出てきた男性が映し出される。

また腕を振り上げて誰かを殴っている彼の顔は、時計の針を早回ししているかのように皺が刻み込まれ、髪が薄くなっていく。

それでも殴ることをやめなかった彼の顔が。

突然、恐怖に歪んだ。

大口を開け、何かを叫びながら背中を見せて逃げていく。

そんな彼の背中が、ばっさりと斬れた。

彼の身体は、見事に真っ二つに、割れた。

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