Faylay~しあわせの魔法
「ランスロット……」

ああそうか、とフェイレイは呟く。

今までの場面はすべて、ランスロットが過去に見ていた景色なのだ。ということは、あの身体を真っ二つにしてしまった男性は……。


色づいた景色は次々と場面を変える。

青く煙る美しい稜線の山脈、青い屋根の大きな城、そして白い服に紺のマントをつけた騎士たち。

激しい剣の稽古の合間に、先程までの疎ましげな瞳とは違う、朗らかな笑顔が見える。笑顔に囲まれている。

それを見ているフェイレイの目が、何者かの手によって遮られた。

「見てしまったかい?」

その低く優しい声に振り返ると、いつもの優しい笑みの中に、少しだけ悲哀を混ぜたランスロットがいた。

「あんたの記憶なのか、これは……」

「そう。……何故私がセルティアにいられなかったか、何故アライエルにいたのか……分かったかな」

フェイレイが少しだけ困ったような顔をすると、ランスロットは穏やかに語りだした。

「私は君が思っているような、綺麗な人間ではないんだ……」

剣士の家系に生まれたランスロットは、父親に剣士となるべく育てられていた。

その力は並外れていて、幼い頃にはすでに父親を追い越してしまった。

やがて彼に勝てる者はいなくなり、それをやっかんだ者たちに奇襲され、それを跳ね返そうとして力の加減を誤り──殺してしまった。

それから村人はともかく、父親でさえもランスロットには辛く当たった。

先程見た白黒の映像の通り、毎日毎日、折檻されて過ごした。

お前など私の子ではないと、罵られながら。

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