Faylay~しあわせの魔法
「ある日とうとう、耐え切れなくなったんだ。そして……思わず反撃してしまった」

映像に映っていた真っ二つに身体を割っていた男。あれがランスロットの父であったのだ。

「もうこの世から消えてしまおうと思った。だけどね……助けられてしまったんだ」

「……ティターニア?」

フェイレイが訊くと、ランスロットは微笑みながら頷いた。

「そう、彼女がティターニアだ。彼女が私に世界を与えてくれた」

故郷は追われてしまったけれど、北の大陸で彼は自分の持つ力を、人々を護る力に変えようと努力した。

そうして騎士団長にまで登りつめた。

「君の夢を潰してしまって、申し訳ないけれど……これが真実なんだ。私は、罪のない人々を殺しながら、のうのうと生きてきた……」

眉尻を下げながらそう言うランスロットに、フェイレイは首を振った。

「けど、そんな過去を乗り越えて、世界を護ったんだろう? ……やっぱりランスロットは俺の憧れる『勇者』だよ」

「……君は優しい子だね」

ランスロットは色づいたスクリーンの世界へと目をやった。フェイレイもそれに倣う。

まだ流れ続けるスクリーンの映像には、信頼の瞳をこちらへ向ける騎士たちが映っていた。

そして、翡翠の髪の女性も映っていた。

アライエルに渡ってからも、時折ランスロットのもとを訪れては励ましていたのであろう、ティターニアの姿が。

「私が護りたかったのは『世界』ではなく……『彼女』だった」

ランスロットは哀しげに微笑む。

「フェイレイ。君も、そうなんだろう……?」

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