Faylay~しあわせの魔法
「……うん」

フェイレイは頷いた。

「俺、行かなきゃ」

その言葉に、ランスロットも頷く。

「頑張って」

大きな手を赤い髪の上に乗せ、優しく撫でる。そのぬくもりにフェイレイは父を思い出した。

酷い仕打ちをされ、自身の手で恐ろしいことをしてしまった。そんな過去を乗り越えてきたランスロットだからこその力強い優しさは、本当に父に似ていた。

「やっぱり似てるな、父さんに」

「君のお父さんにかい?」

「優しくてあったかい人だよ」

「……それは光栄だな」

ランスロットは少しだけ哀しげに眉尻を下げた。

そして、フェイレイの背中を軽く押してやる。

「私はただ、君の傍にいることしか出来ない。君の力は、君自身の手で引き出すんだ」

「うん」

頷きながら、フェイレイは歩き出し、やがては走り出した。


どうどうと、また耳の奥で音が聞こえ出す。

身体は白い光に包まれ、再び感覚ごと呑まれていった。





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