Faylay~しあわせの魔法
アライエル王都、ヴァルトの街は驚きに包まれていた。

突然真っ白になった灰色の空。

冷たく降りしきっていた雨がさあっと消え、春風のように優しくあたたかな風が人々の間をすり抜けていき、そしてアライエル、星府、両軍の兵士たちの姿が忽然と消え失せた。

目を丸くして言葉を失う民衆は、白く柔らかな光に包まれた空を見上げる。

そこに浮かんでいたはずの巨大な戦艦も、黒と青の飛行艇も、何もなかった。

白い光に、呑まれて消えた。





「リディル様!」

何もなくなった真っ白な空を見上げながら、キャプテン・ブラッディはヴァルトの街道を、港へと逃げる人々の波に逆らって走っていた。

あの光は見覚えがある。

10年前にリディルとシャンテルを反星府軍から奪い返したときだ。

突然あの白い光が現れて、周辺の建物をはじめ、兵士たちの姿さえも忽然と消し去った。ただひとり、シャンテルの亡骸を残して……。

「フェイレイ、何があった! 応答しろ!」

必死に呼びかけても、フェイレイからの応答はない。

嫌な予感がした。


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