Faylay~しあわせの魔法
「何が起きたの……」

ローズマリーは赤い瞳を戸惑いに揺らしながら、何もなくなった空を呆然と見上げていた。

空に浮かんでいた戦艦も、たった今戦っていた兵士たちも、今までそこにあったものが綺麗さっぱり消えている。

あまりの出来事に、まるで夢でも見ているかのようだった。

やがて、白い光に呑まれて辺りには何もなくなったという話を、過去に聞いていたことを思い出す。

「リディル……?」

まさか彼女が?

そう思ったときだった。

「人だ! 人が落ちてくるぞ!」

真っ白になった空をよく見ようと、屋根の上に上がっていた民衆たちから声が上がった。

その声に、ローズマリーも目を凝らす。

真っ白になった空から、キラキラと光るものが落ちてくるのが見えた。それはふわふわと、シャボン玉のように柔らかな動きで降りてくる。

確かに良く見れば人だ。

だが、精霊の力がない今──どうやってあんなにゆっくりとしたスピードで降りることが出来るのか……。

呆気に取られてそれを眺めている人々と肩を並べ、落ちてくる人をジッと見つめていたローズマリーの瞳に、赤い髪がふわふわと揺れているのが見えた。

「──フェイレイくん!」

ローズマリーは走る。その落下地点まで、全速力で。

< 567 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop