Faylay~しあわせの魔法
「フェイ!」

手を伸ばしても、もう届かない。

このまま離れたらもう二度と逢えないような気がして、リディルは必死に手を伸ばした。

けれども、その手がフェイレイに届くことはない。

ふと、遥か下の方に、懸命に駆けてくるピンクブロンドの髪をした女性の姿が見えた。

「ローズさん! ローズさん! フェイを、お願いっ……!」

普段叫んだりしないリディルが、精一杯声を張り上げてローズマリーに想いを託した。

それがローズマリーに届いていたのかは分からない。

リディルの意識は、白い光の中へと吸い込まれていく。

(フェイ……フェイ……)

薄れる意識の中でも、ずっと呼び続ける。

「大丈夫」

リディルの願いを込めた小さな声に、凛とした女性の声が響いた。

「貴女が助けたのですもの。大丈夫よ……」

優しいその声に、そっと頭を撫でてもらったような気がした。

それに安心して、リディルは深いところまで意識を落とした。




ふっと目を開けたとき、そこは暗闇に包まれていた。

最後の記憶が真っ白な空間だったためか、暗闇に目が馴染まず、目を開けたのかそうでないのか分からなかった。

何度も瞬きを繰り返し、吐息をつきながら腕を伸ばす。

肌にさらさらとした柔らかい感触が伝わり、何となくベッドに寝ているのだということを認識した。

< 571 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop