Faylay~しあわせの魔法
『おにいさま』
紺色の髪に、紫暗の瞳を優しく細める少年がいる。
『クライヴさま』
薄い水色の髪の、顔に皺を刻んだ品の良い佇まいの初老の男性がいる。
『サイラスさま』
長い茶髪の、長身で体格のいい男性は、いつも初老の男性に頭を小突かれてガアガア喚いていた。
(お兄様、ヴァンのおじいさん、船長)
今の記憶と過去の記憶が混ざり合い、閉じられていた過去がどんどん開いていく。
しあわせに暮らしていたはずのリディルを、いきなりやってきた反星府軍の軍人たちが無理やり皇都の街の中心まで連れて行く。
どこかも分からない薄暗い部屋に閉じ込められ、母と一緒に逃げようとするたびに捕まり、母が目の前で暴行を受けた。
逃げたら殺される。
お母様ももっと酷い目に合わされる。
そう思い込まされ、鬼のようにも見える大人たちの顔色を伺いながら、部屋の隅でただ震えることしか出来なくなってしまったところに、サイラスが現れる。
突然しあわせな日常から地獄に落とされた幼い子どもに、やっと差し込んだ希望の光。
なのに。
希望は母の命とともに、呆気なく崩れていった。
紺色の髪に、紫暗の瞳を優しく細める少年がいる。
『クライヴさま』
薄い水色の髪の、顔に皺を刻んだ品の良い佇まいの初老の男性がいる。
『サイラスさま』
長い茶髪の、長身で体格のいい男性は、いつも初老の男性に頭を小突かれてガアガア喚いていた。
(お兄様、ヴァンのおじいさん、船長)
今の記憶と過去の記憶が混ざり合い、閉じられていた過去がどんどん開いていく。
しあわせに暮らしていたはずのリディルを、いきなりやってきた反星府軍の軍人たちが無理やり皇都の街の中心まで連れて行く。
どこかも分からない薄暗い部屋に閉じ込められ、母と一緒に逃げようとするたびに捕まり、母が目の前で暴行を受けた。
逃げたら殺される。
お母様ももっと酷い目に合わされる。
そう思い込まされ、鬼のようにも見える大人たちの顔色を伺いながら、部屋の隅でただ震えることしか出来なくなってしまったところに、サイラスが現れる。
突然しあわせな日常から地獄に落とされた幼い子どもに、やっと差し込んだ希望の光。
なのに。
希望は母の命とともに、呆気なく崩れていった。