Faylay~しあわせの魔法
「わたしの、せい……」

目を虚ろにして、リディルは呟く。

「全部、私のせい……私が貴方を目覚めさせた……」

そのせいで人の皇であるカインが最初に目をつけられた。壊れていく世界を見届ける役割を背負わされた。

それでも5年の間は、カインも自分にとり憑いた存在に気づくことはなかったのだろう。目覚めたばかりの魔王は、あまりにも脆弱であった。

それがどうして力をつけていったのか。

「私が……精霊士にならなければ良かった……」

リディルはすべてを理解した。

だから5年前だったのだ。

10年前にリディルの、ティターニアの哀しみの声を聞いて目覚めた魔王は、5年の間は大人しくカインの傍にいた。だが、5年経って、リディルが精霊士としての任務に就くようになったから。

遠く離れたところから愛しいティターニアの力の片鱗を感知し、徐々に自分がすべきことを理解し、力を蓄え、カインを取り込んでいった。

10年前、あんなことを願わなければ。

7年前、精霊士になることを決めなければ。

5年前、アリアの心配を聞き入れて、ギルドを辞めていれば──今頃は、誰も不幸になることなかった。そしてリディルも、ずっとフェイレイの傍にいられたのに。

今更悔いてももう遅い。自分のした選択が、この事態を招いたのだ。

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