Faylay~しあわせの魔法
「……星府軍は?」

フェイレイはアレクセイの姿をした魔王に、リディルが抱きかかえられている姿を見たのが最後だ。あれからどうなったのか……。

「そっちは知らないわ」

ローズマリーは憎々しげに呟いた。

「リディル……あのとき、船長の話していた力を放出したのだわ。それでティル・ジーアも、アライエルの飛行艇も全部消し去ったのです」

「消した?」

「船長が話していたでしょう? シャンテル様が亡くなられた後、辺りが白い光に包まれて何もかもが消えたって。それと同じことが起きたの。実際見ていたのだけれど、今でも信じられない光景だわ」

「リディルがやったのか?」

「恐らくね」

フェイレイはランスロットといた白い空間を思い出す。

あれは、リディルが創り出した空間?

リディルに助けられた?

そう言われれば、ずっとリディルに呼ばれていたような気がする。細い声を張り上げて、懸命に呼びかけてくる彼女の声が、耳の奥に残っている。

「でも、もっと不思議なことがあったんです」

ヴァンガードが割り込んでくる。

「その消えた飛行艇は、元の格納庫に戻っていたんですよ」

「そう。そしてパイロットや兵士たちは全員、自分の家のベッドの中よ」

2人とも淡々と話す。

あり得ないことなのだが、実際にそうなっていたのだから認めざるを得ないのだ。

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