Faylay~しあわせの魔法
「悪い人じゃ、ないんだ」

フェイレイも溜息をつく。

刃を交えた彼には良く分かる。アレクセイが真っ直ぐで、一途で、少しも淀みのない心を持っていることが。

セルティアを攻撃されたことを許す事は出来ない。

だが彼の人となりを否定することも出来ない。

だからこそやるせなくなる。目指しているものはきっと、同じはずなのに──。


フェイレイはパンとスープを口の中に掻っ込むと、ガタン、と椅子を鳴らして立ち上がった。

「俺も行ってくる」

「え? 戦いにですか? 貴方はまだ休んでいてくださいよ。最終決戦までは休ませておくと、船長も海賊の皆さんも言っておられましたよ」

「うん、でも行ってくる。皇都に着く前にもっと強くならないとなんだ」

そうでなければアレクセイと対話することも出来ない。

彼とは分かり合える。フェイレイはそう思っていた。


食堂を出掛かって、そういえば愛剣は折られてしまったのだということを思い出し、近くにいた船員に武器を貸してもらうと、颯爽と甲板へ飛び出していった。

雨と海水の降りかかる甲板の上で、剣を振るうフェイレイの姿を発見したキャプテン・ブラッディは、茶色の髪をガシガシと掻きながら溜息をついた。

「寝てろっつっても、落ち着いてらんねぇか……」

それなら気が晴れるまで戦わせておくしかないと、しばらくは見守ることにした。

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