Faylay~しあわせの魔法
地平線まで続く深い緑の針葉樹が、強い風を受けてざわざわと騒いでいた。
尖った森を撫で付けてやってきた闇色の風を正面から受け、フェイレイの燃えるような赤い髪がバラバラに揺れる。
意志の強そうな深海色の瞳が見据えるのは、針葉樹林の向こうから差し込んでくる白い光。
「朝だ」
そうなるとこっちが有利だ。
フェイレイは口元に笑みを浮かべた。
耳につけた小型インカムに手を沿える。
「リディル、見つけた?」
ジジ、と微かなノイズの後、高くもなく低くもない、囁くように小さな声が聞こえてきた。
『朝日の方角。……それで最後』
「了解」
白みだした暁の空を、下から力強く照らし出す黄金色の太陽に目を細めつつ、針葉樹林の中にいる魔族を探し、瞳を動かす。
光が苦手な魔族は、朝日が昇りきらないうちに決着をつけようとするだろう。
フェイレイが今いる塔から森に辿り着くまでには時間がかかる。その間に街まで迫ってくるとやっかいだ。
ならば。
僅かに背後を振り返ると、少し離れたところにある王城のバルコニーに、数人の兵士たちの中に混じり佇む、萌葱色のコートを風に靡かせた少女の姿を小さく確認出来た。
フェイレイは少女に向かってにっこり微笑むと、身体を支えるために掴んでいた尖塔の避雷針を放し、青い屋根の急斜面を駆け下りた。
「頼むよ!」
そう叫び、地上100メートルの高さを飛び降りる。
大の字でダイブした途端、周りの風がゴウと唸り、フェイレイの手足に巻きついた。
《相変わらず、危ないことをする》
耳を掠めていく“風”が、そう囁いた。
尖った森を撫で付けてやってきた闇色の風を正面から受け、フェイレイの燃えるような赤い髪がバラバラに揺れる。
意志の強そうな深海色の瞳が見据えるのは、針葉樹林の向こうから差し込んでくる白い光。
「朝だ」
そうなるとこっちが有利だ。
フェイレイは口元に笑みを浮かべた。
耳につけた小型インカムに手を沿える。
「リディル、見つけた?」
ジジ、と微かなノイズの後、高くもなく低くもない、囁くように小さな声が聞こえてきた。
『朝日の方角。……それで最後』
「了解」
白みだした暁の空を、下から力強く照らし出す黄金色の太陽に目を細めつつ、針葉樹林の中にいる魔族を探し、瞳を動かす。
光が苦手な魔族は、朝日が昇りきらないうちに決着をつけようとするだろう。
フェイレイが今いる塔から森に辿り着くまでには時間がかかる。その間に街まで迫ってくるとやっかいだ。
ならば。
僅かに背後を振り返ると、少し離れたところにある王城のバルコニーに、数人の兵士たちの中に混じり佇む、萌葱色のコートを風に靡かせた少女の姿を小さく確認出来た。
フェイレイは少女に向かってにっこり微笑むと、身体を支えるために掴んでいた尖塔の避雷針を放し、青い屋根の急斜面を駆け下りた。
「頼むよ!」
そう叫び、地上100メートルの高さを飛び降りる。
大の字でダイブした途端、周りの風がゴウと唸り、フェイレイの手足に巻きついた。
《相変わらず、危ないことをする》
耳を掠めていく“風”が、そう囁いた。