Faylay~しあわせの魔法
「……ごめんね」

本当は、少し恐ろしい。

こうして傍にいることも、会話をすることにもまだ慣れなくて、ほんの少しだけ身体が震える。

けれど、心の奥底で。

彼のことが愛しいと感じているのだ。


どうすればいいのかと、自分の中に眠るティターニアに問いかけても答えは返らない。

それはきっと、リディルの中ですでに進むべき道が決まっているからなのだ。

「諦めないよ。まだ、頑張れるよ……」

そう呟きながら、左手のシルバーリングに触れるのは無意識だ。

それを指でなぞりながら、呪文のように繰り返す。

いつでも前を向いて、太陽のようにキラキラと輝いている愛しい人のように。

諦めないで、まだ、頑張れると──。





リディアーナ。

そう呼ばれてリディルは意識を覚醒させる。

いつの間にか魔王と一緒に眠ってしまっていたのか──そう思いながら目を開けると、魔王が上からリディルを見下ろしていた。

リディルはぼんやりとその顔を眺め。

はっと目を大きく開けた。

「……お兄、様?」

「リディアーナ」

ふわり、と柔らかく笑うその顔は、魔王の見せる優しい顔とも違った。

遠い遠い昔、幼いリディルが慕っていた、あの笑顔だった。

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