Faylay~しあわせの魔法
暴風吹き荒れる港に上陸したフェイレイたちは、海賊船に船員半分を残して港に下り立った。

「人の気配がない……」

暗闇に包まれた港には、まったく人の影が見えなかった。

こんな嵐だ。高波が襲ってくるかもしれない港に、人の姿がなくとも不思議ではないのだが、明かりがどこにも見えないのだ。

停泊している豪華客船にも、波に攫われていったクルーザーや小さな漁船、そして陸地に大きく構えるターミナルビルにさえ明かりはない。

ターミナルビルは完全に機能を停止しており、自動扉が開くことはなかった。

建物を迂回して街の方を見やる。

整備された広い歩道、そして馬車道、その先にある商業地区も闇に呑まれている。

ただ暴風雨の音が耳に届くだけの暗闇の中、一同は唖然とするしかなかった。

世界のどの国よりも繁栄を極めているはずの皇都に、人の灯す明かりがまったくないとは……。


ゴウゴウと風が唸る中、別の唸り声が響いてきた。

「魔族だ」

道の両側にある壊れた建物の屋根の上に、ズラリと獣型の魔族たちが次々と現れた。

こちらは数十しかいない海賊団。

敵方の姿はこの闇で見えないが、気配がするだけで数千を越える。おまけに、中には人型の魔族もいるようだった。

フェイレイたちでさえ苦戦した人型の魔族。手に余る戦力だ。

「精霊の力なしにこの数か。……上等だ」

キャプテン・ブラッディは唇の端を上げ、剣を腰から引き抜いた。

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