Faylay~しあわせの魔法
魔族たちが目を丸くしている隙に、そのうちのひとりの懐へ飛び込む。

声を上げる間も無く、魔族は真っ二つに斬られた。

「な……なんだと!?」

どよめく魔族たちの合間を塗り、また別の魔族の前へ。その移動速度を彼らが目に留めることは出来なかった。

風のように素早く、軽やかに、そして力強く舞うフェイレイを、ヴァンガードは驚愕の目で見ていた。

「凄い……」

彼の強さは最初からずっと認めてはいたけれど、この数週間で更に進化した。

留まることを知らないその力には、感服せざるを得ない。

「追いつけないじゃないかっ……」

悔しさを滲ませながら、トリガーを引く。


そしてローズマリーは感嘆とともに、何か拭い去れない不安を抱えた。

進む道を塞ぐ魔族たちの脳天に身を翻して脛を叩き込み、それを足がかりに宙へ飛び上がり、上から降って来る魔族たちを次々に拳や蹴りで撃破しながら、フェイレイの動きを見る。

「あの子はもう、アレクセイと互角にやれる」

それは心強い力のはずだ。

けれど……。

ローズマリーの予測を上回る成長に、畏怖を感じずにはいられない。

普通なら何年もかかって到達するところを、彼はたったの数日でやってのけているのだ。

血筋を考えれば、それは何ら不思議ではないことなのかもしれないけれど。

彼を強さくさせているものが、リディルを助けたいという想いから来ているものなのだとは解るけれど。

──どこか、不安だった。

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