Faylay~しあわせの魔法
「どうして……どうしてっ……!」
ドン、と球体の壁を叩きながら慟哭するリディルから目を逸らすことなく、アレクセイは答えた。
「彼らが皇家に歯向かう者だからです。皇家に仇なす者を、見過ごすわけにはいかないのです」
「そんなこと、お兄様は……!」
「願ってもおられないし、お赦しにもならないでしょう。分かっています。それでも私は皇家の騎士なのです。皇家を護るためならば、どんなことでも」
きっぱりと言い放つアレクセイに、リディルは絶望の闇の中へ落ちていく心持ちだった。
あんなにあたたくて優しい人たちを、自分のために犠牲にしてしまった。
リディルの正体を知りながら、強い信念で周りから護り、娘のようにかわいがってくれた人たちを……。
ぱたぱたと黒い球体に涙の雫が落ちていく。
アレクセイが憎かった。
けれど、それ以上に自分が憎かった。
アレクセイはカインの代わりに連合軍に粛正されようとしている。
彼にそんな決意をさせてしまったのも、ランスとアリアが散っていったのも、すべて自分のせいなのだと──。
「……これ以上、フェイを傷つけないで」
震える声で訴えるリディルに、アレクセイは一礼する。
「皇女殿下。申し訳ございません、その命令には……従えません」
バサリと黒いコートを翻し、アレクセイはリディルのもとを去っていく。
「やめて! お願いだから戦わないで! フェイと戦わないでっ!」
リディルはドンドンと球体に拳を叩きつけた。
それではまったく歯が立たず、精霊を召喚しようとしても球体の力に阻まれているのか声が届かず、そして内に秘めたティターニアの力も、不安定なままでうまくコントロール出来なかった。
白く淡く光る力の片鱗は、ただ輝くばかりで纏まらず、ユラユラと虚空を彷徨って消えるだけ。
ドン、と球体の壁を叩きながら慟哭するリディルから目を逸らすことなく、アレクセイは答えた。
「彼らが皇家に歯向かう者だからです。皇家に仇なす者を、見過ごすわけにはいかないのです」
「そんなこと、お兄様は……!」
「願ってもおられないし、お赦しにもならないでしょう。分かっています。それでも私は皇家の騎士なのです。皇家を護るためならば、どんなことでも」
きっぱりと言い放つアレクセイに、リディルは絶望の闇の中へ落ちていく心持ちだった。
あんなにあたたくて優しい人たちを、自分のために犠牲にしてしまった。
リディルの正体を知りながら、強い信念で周りから護り、娘のようにかわいがってくれた人たちを……。
ぱたぱたと黒い球体に涙の雫が落ちていく。
アレクセイが憎かった。
けれど、それ以上に自分が憎かった。
アレクセイはカインの代わりに連合軍に粛正されようとしている。
彼にそんな決意をさせてしまったのも、ランスとアリアが散っていったのも、すべて自分のせいなのだと──。
「……これ以上、フェイを傷つけないで」
震える声で訴えるリディルに、アレクセイは一礼する。
「皇女殿下。申し訳ございません、その命令には……従えません」
バサリと黒いコートを翻し、アレクセイはリディルのもとを去っていく。
「やめて! お願いだから戦わないで! フェイと戦わないでっ!」
リディルはドンドンと球体に拳を叩きつけた。
それではまったく歯が立たず、精霊を召喚しようとしても球体の力に阻まれているのか声が届かず、そして内に秘めたティターニアの力も、不安定なままでうまくコントロール出来なかった。
白く淡く光る力の片鱗は、ただ輝くばかりで纏まらず、ユラユラと虚空を彷徨って消えるだけ。