Faylay~しあわせの魔法
回廊と回廊が繋ぐ謁見の間に入ったところで、前方からゆらりと黒い気を放ちながら、深海色の瞳を冷たく光らせたフェイレイがやってきた。

フェイレイは魔王の姿を目に入れると、そこで足を止める。

魔王も同時に足を止めた。

周りを取り囲む白と金で彩られた壁はずっと高く続き、丸みを帯びた天井には美しい楽園の天井画が描かれている。

穏やかな笑みを浮かべる天使たちの見守る艶やかな床の上には、激しい憎悪の炎を燃やしながらも、静かに向き合うフェイレイと魔王がいる。

「ランスロット」

魔王は口元にだけ笑みを浮かべ、その名を呟く。

「人間ごときが大層な力を持つから、そうなる」

人というよりは獣のように殺気を振りまくフェイレイを鼻で笑い、一歩足を踏み出す。

「魔王……アルトゥルス……」

唸るような低い声で呟き、魔王に合わせるかのようにフェイレイも足を踏み出した。

床の上を引き摺ってきた剣の先をゆらりと持ち上げ、魔王の姿をしっかりと瞳に捉えたままゆっくりと歩み寄り、そして一気に剣を振り上げる。

磨かれた床を滑るように走る衝撃波。

魔王は片手を翳し、飛んできた衝撃波をその手前で受け止める。

そこにグッと力を込めると、その衝撃は倍になってフェイレイに跳ね返った。

戻ってきたそれを上段から剣を振り落とし、左右に分断して吹き飛ばす。ドオオ、と激しい音を立てて後方の壁が粉々に吹き飛んだ。

それを確認することなく、フェイレイは床を踏み抜く勢いで蹴る。

一瞬で魔王の目の前まで移動し、素早く斬りかかった。

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