Faylay~しあわせの魔法
「“私たち”が貴方を目覚めさせ、狂わせて……世界もメチャクチャにしてしまった。だから……責任、取るよ」

目の前にチカチカと光が走る。相当身体に負担がかかっていた。

全身から血を噴き出しながら、それでも更に力を送り、カインの魂の感覚を掴む。

「ローズさん!」

戸惑いながら見守っているローズマリーに向かって叫ぶ。

「お兄様を呼んで! 解き放って!」

その言葉に、ローズマリーは弾かれるように走り出した。

両手を広げてカインの身体に飛びつき、叫ぶ。

「カイン! 戻ってきて、カイン──!!」

その声は波紋となって、弱っていたカインの魂を揺さぶり起こす。

魔王なのか、カインなのか。人の声とは思えない咆哮を上げると、カインの身体から黒い霧が飛び出し、一瞬にして謁見の間に広がった。

それには目もくれず、ローズマリーはカインを呼び続ける。

「カイン! カイン、しっかりして!」

すっかり色を失くしてやせ細った頬を叩き、必死に名前を呼んでいると、黒い霧が天井を打ち崩し、ガラガラと落ちてきた。

このままでは押し潰される。

崩れてくる巨大な塊を打ち砕こうと拳を握り締めると、横から防壁弾が飛んできた。

「ローズさん、ここは危険です、外へ!」

「ええ」

ローズマリーはカインの腕を自分の首に回し、落ちてくる瓦礫を見事に撃ち崩すヴァンガードに護られながら走った。

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