Faylay~しあわせの魔法
地上で戦っていた歩兵部隊もその異変に気づき、慌てて撤退命令を出す。

「戦艦が落ちる!」

兵士たちは潮が引けるように散っていく。

「……なんだぁ!?」

キャプテン・ブラッディも海賊たちとともに激しい火花の散る空を見上げる。

皇宮辺りから飛び出した真っ暗な闇に戦艦が引き寄せられ、駒のようにぶつかっては弾け飛んでいる。

それに気をとられているうちに魔族が攻め込んできた。舌打ちしながら一撃でとどめをさしてやった……と思ったら。

「こいつら……強くなってやがる!」

斬って捨てたはずの魔族がむくりと起き上がり、牙を剥き出しにして更に飛び掛ってきた。

仲間たちの叫び声があちこちから上がる。

「チッ……何だってんだ!」

振り返った先に聳え立つ巨大な城は、すっかり暗黒に呑まれてしまっていた。

そこからボコリ、と更に闇が生まれ、それは徐々に人の形を形成していく。

こんな暗闇の中で、それでもはっきりと見える。

頭を重そうにゆっくりともたげ、徐々に起き上がっていく巨大な人型の影が。

「……バケモンか」

天まで届こうかという大きさの影だ。

影がゆっくりと腕を振り上げ、集めた戦艦たちを次々に薙ぎ払っていく光景には、さすがのブラッディも声も出せないほどの衝撃を受けた。

人の手に負えるシロモノではない。

誰もがそう思った。

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