Faylay~しあわせの魔法
そこへ、今度は白い光がふわりと広がる。

人型の影を包み込む白い光は、まるで一輪の花。

花弁を美しく夜闇に伸ばし、落ちていく戦艦を柔らかく受け止める。

「リディル様……!?」

思わず手を止めてそれを見ていると、ブラッディの周りをすい、と小さな精霊たちが通り過ぎていった。

よく見れば風に煽られる木々から、雨に触れる地面や建物から、次々と光が浮き上がっていく。

ひとつ、ふたつと様々な色の光が増えていき、蛍のようにふわふわと闇の中を行き交った。

緑色の光が傷ついた身体を癒し、燃え盛る炎に水色の光が飛び込み、雨に濡れて寒さに震える人々の周りに赤い光が灯る。

「精霊だ……」

「精霊が戻ってきた」

精霊士もいないのに、小さな精霊たちは自らの意志で人々に力を貸していた。

淡い光が暗闇を照らし、雨が小降りになり、襲い掛かる魔族たちとの間に土の壁が出来る。そこから鋭い刃がいくつも飛び出し、魔族たちを牽制した。

ブラッディはあまり魔力を持たないため、その姿をはっきりと捕らえることは出来ない。

目を細め、ぼんやりとした光に包まれたそれをがしっと掴み取った。

《きゃあ~!》

《きゃあ~!》

掴まれた緑色の精霊たちは、驚いて悲鳴を上げる。

「あ、驚かせてすまねぇ。お前たち、今までどこにいた? 誰に召喚されてる?」

ブラッディの質問に、手の中の精霊たちはお互いの手を握り合い、プルプル震えながら答えた。

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