Faylay~しあわせの魔法
《誰も召喚してない。私たち、自分の意志でここにきた》

「……自分の意志で?」

小さな精霊たちはこくりと頷いた。

《リディル、頑張ってる》

《リディル、助けなきゃ》

「リディル様を……?」

ブラッディが精霊たちを離してやると、彼女たちは大慌てでひゅう、と空を飛んでいった。

ふわふわと周りを飛んでいく精霊たちは、よく耳を済ませば小さな声で囁いている。



助けなければ。

私たちの、女皇さまを。

たくさん力がいるよ。

みんな、集まれ。

“今度こそ”、閉じ込めてはいけない。

『哀しみの塔』に、ひとり、閉じ込めてはいけない。



「……哀しみの塔、って……『勇者伝説』?」

ブラッディがそう呟いたとき、腕の通信機から声が響き渡った。

『星府軍元帥、アレクセイ=ラゼスタは討ち取られました。星府軍は敗北を認め、撤退なさい。カイン皇帝陛下も無事です。ですから連合軍も退きなさい。貴方たちの勝利です。これより先は互いに協力し、負傷者の救出と、魔族からの防衛に全力を注いでください』

ローズマリーだった。

彼女の声は、両軍にも届く。

「皇后様よ、それは分かったが、あれは一体なんだ!?」

ブラッディの問いに、しばしの沈黙の後、返答が返った。

『すべての元凶、魔王です。今、皇女殿下と……勇者が彼を止めようとしていますわ』

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