Faylay~しあわせの魔法
混沌とした戦いの最中、ランスロットと対話するのに、フェイレイは意識を深く潜り込ませていた。

周りの色や景色が遮断され、何も聞こえなくなった黒い空間に、金色の髪の青年と向かい合って立つ。

「何故私を拒絶する」

苦々しい顔でランスロットは問う。

「『勇者』を目指して力を求めた君が、その力で世界の王になろうというんだよ。何を迷うことがある。力のある者が世界を支配する。これは自然の理だよ」

「……なんで“支配”なんだよ」

逆にフェイレイが問うた。

「力があったら、支配しなくちゃいけないのか? 俺はそんなことは望まない。自分の大切な人たちを護れたら、それでいい」

「君の意見などどうでもいいいんだよ」

ランスロットがスッと腕を挙げ、フェイレイを指差す。

するとフェイレイの腕も上がり、合わせ鏡のように同じ動きをした。

「私はずっと、グリフィノーの血に宿り続けた。呪われし穢れた血とされながらも、ありがたいことに絶たれはしなかった。脈々と受け継がれるその流れの中で私は待っていたんだ。私の力を求め、それを発動出来る強い心の持ち主が現れることを。けれど……」

ランスロットはフッと目を伏せる。

「誰も私の力に耐えられる者はいなかった。素質のある者は何人かいたよ。けれどみんな精神を壊し、私の手の届かないところで命を絶ってしまうんだ。……君のお父さんも、十分に素質を持ってはいたんだけどね」

「……父さんが?」

「一族の歴史は知らずとも、君のお父さんは自分の中に莫大な力が眠っていることを知っていた。だから剣士をやめた。私を危険な力だと判断したんだ。……彼が君のように力を求めれば、世界の王となれる強さを持っていたのに。だが敢えてそうしなかった。……愚かだ。私を求めていれば、アレクセイなどにやられはしなかったのに」

そうだったのか、とフェイレイは目を丸くした。

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