Faylay~しあわせの魔法
真っ黒だった世界に、パキン、と白く亀裂が走る。

それがバラバラと崩れ落ち、白い世界が広がっていった。

「あんたが出来なかったこと……。信じてくれる人の心に応えようとすることで、自分の持っている力を何倍にも高めてくれるんだってこと。あんたに、見せたい」

険しい顔のランスロットが、白い光の中に徐々に溶け込んでいく。

──これで完全に彼を抑えられたのか、フェイレイには分からない。

けれどもう行かなくては。

愛しい人が、待っている。



すっと意識を浮上させると、眼前にに天使の描かれた瓦礫が落ちてきて、床にぶつかってぐしゃりと崩れた。

「──リディルっ!?」

瓦礫の降ってくる中、振り返ってリディルの姿を探す。

ガラガラと崩れ落ちてくる瓦礫を剣で斬り崩し、視線を走らせると、真っ黒な繭のようなものが見えた。

辺り一体に糸のようなものを張り巡らせ、その中心でドクドクと脈打つその中に、微かに白い光が見える。

「リディル!」

何十にも重なる黒い糸を斬り裂き、繭に近づく。

幅5メートルはありそうな巨大繭は、剣で斬っても斬ってもすぐに再生して、白い光を覆い隠してしまう。

「リディルっ!」

フェイレイは叫びながら手を繭の中に突っ込んだ。

思い切り腕を伸ばしても光にまでは届かないと判断するや否や、僅かな隙間から頭ごと突っ込み、真っ黒な繭の中で白い光に包まれ、目を閉じているリディルに手を伸ばした。

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