Faylay~しあわせの魔法
もう精霊たちを消させまいとフェイレイも奮闘するが、どうしても繭の糸を断ち切れない。

一進一退の攻防を続けるフェイレイたち。

その様子を外から眺めている者たちがいた。

「あの繭を壊せばいいんですね!」

やっと天井の崩れが落ち着いてきて、小雨の降る庭園から謁見の間を覗いたヴァンガードが状況を的確に判断し、精霊たちの力が込められた弾を撃ち放った。

それは黒い繭を突き抜けていくものの、まだ壊すには力が足りない。

何度も繭を撃ち抜くヴァンガードは、アレクセイから受けた攻撃や、上から降ってきた瓦礫を身体に受けているために満身創痍だ。

それでもフェイレイやリディルを助けようと、全身の痛みに耐えながら魔銃を撃つ。

「皇都にいる精霊士たちの力をすべてここへ! 精霊を召喚出来なくてもいい、魔力を解き放ち、彼らに力を!」

カインを抱きしめながらローズマリーは通信機を通し、星府軍と連合軍、そして世界中に呼びかけた。


『勇者』と『皇女』が、世界を滅ぼそうとする『魔王』と戦っている。

事前にそう知らされていた人々は、彼らの勝利を信じて祈りを捧げた。

荒ぶる自然の驚異、そして魔王の闇を間近から、また遠くから眺め、自分たちにはまったく手に負えないと絶望に打ちひしがれながらも、微かな希望を抱く。

その希望に、小さな祈りと力を。

ほんの僅かな力だけど、この世界を護ろうと戦ってくれている者達に、どうか届きますように。

その想いが小さな光の粒となって闇に包まれた空へと舞い上がり、やがて天の川のように流れ出す。

ゆったりと揺らめきながら空を漂う光は幾筋にもなり、中央大陸へと集まりだす。

ひとつひとつは頼りない小さな力だけれど、集まったそれらは何者にも負けない大きなうねりとなり、やがて魔王の広げる力をするりと抜けて皇城にまで流れ着いた。

それを受け取った精霊たちが、最後の力を振り絞ってフェイレイとリディルに力を送った。

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