Faylay~しあわせの魔法
「う、ぐぐぐぐ……」

剣を握る手に力が入っているのかそうでないのか、まったく分からないほど感覚が薄れていく。

精霊士は己の魔力と精神力で精霊を召喚し、戦うのだということは分かってはいたが……想像以上だ。

身も心も削られる、まさに命を捧げての戦闘。

それが精霊の王ともなれば尚更だ。女王召喚でリディルが何度も倒れたのも頷ける。

《一気に奴を貫くのだ、真の『勇者』よ!》

長引けば強大な力に耐え切れず、命を落とすことになる。

精霊王は戦いに決着をつけようと、フェイレイの魔力を吸い上げ、更に力を強めた。

全身に圧し掛かる力、そして奪われていく心。

歯を食いしばっても震える身体。薄れていく意識。

それでも、どこかへと飛んで行きそうになるフェイレイを地に繋ぎとめるのは、リディルの言葉や精霊たち、人々の想いの欠片だ。

この世界に生きるすべての人たちとともに、その先の未来へ踏み出すために。

「うおおおおおおっ!!」

力の限り、剣を振り下ろした。


天を貫く光が方々へ吹き飛ぶ。

それは分厚い雲の下に蔓延っていた魔王の力を、皇都の空を覆う暗雲ごと呑み込んで巨大な竜巻となった。

その中にフェイレイとリディルも巻き込まれていく。

力を放った本人をも巻き込む巨大な力。

五体を引き千切られそうな激しい暴風の中、一緒に宙へ舞い上がったリディルへと手を伸ばした。

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