Faylay~しあわせの魔法
風に舞う木の葉のように翻弄され、何度も引き離されそうになりながら、お互いに伸ばした手をしっかりと掴み、引き寄せ合う。

強く抱きしめあった2人は、そのまま光の洪水に巻かれていく。

「どうなるんだ、俺たち……」

「……分からない」

ゴウゴウと唸る白い光の中には、様々な色が飛んでいた。

赤、青、黄、緑……黒。

黒い色だけは細く長く伸び、白い光と交じり合っていくようだった。それはやがて完全に交じり合い、徐々に消えていく。

その消えていく黒の中に。

ひとりの男性が身を漂わせていた。

真っ黒な長い髪と、真っ黒なローブを羽織った、見たことのない男性。

けれど、とても良く知っている。

「……アルトゥルス!」

リディルが叫び、魔王に向かって手を伸ばす。

そんな彼女に、フェイレイは思う。

魔王はただ、リディルを護っていただけだった。

ランスロットの言うことに翻弄され、真実はずっと隠されてたままだったけれど。

ティターニアの力を利用するためにリディルを攫ったのだとばかり思っていた魔王は、フェイレイがランスロットに操られていたときも、ずっとリディルを護っていた。

──彼はティターニアを愛していた。

その事実を、はっきりと突きつけられていた。

「アルトゥルス!」

リディルの声に、魔王が振り返る。

漆黒の瞳を細め、フェイレイとリディルの姿を捉えた彼の顔は、哀しげに歪められた。

それを見るフェイレイの身体に、電流のような衝撃が走る。

彼もまた──ランスロットと同じ。

ただ、後には引けなかった……それだけではないのか。

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