Faylay~しあわせの魔法
「……なんで」

聞かなくても分かるような気がした。

リディルの優しさは、フェイレイが一番良く知っているのだ。

それでも問いかけずにはいられない。何とかして引き止めたい。その想いから一歩、リディルの方へ足を踏み出した。

リディルはそれから逃げるように、一歩、後退する。



そこへヴァンガードがやってきた。

ローズマリーとカインを軍の救護部隊に引渡し、そしてフェイレイたちを探して瓦礫の山を乗り越えてきたところだった。

「フェイレイさ……」

声をかけようとして、踏みとどまる。

何だか様子がおかしかった。



「私、色んな人を傷つけてしまった。アルトゥルスも、アレクセイも……父さんや母さん、フェイの大切な人たちを」

ボロボロとリディルの目から涙が零れていく。それは痛々しいほどに。

「私もう、フェイと一緒にはいられない……」

「そんなことない!」

フェイレイは激しく首を横に振った。

「これからもずっと一緒にいよう。父さんも母さんも、リディルのしあわせを願ってるよ」

「私にしあわせになる資格なんて、ないの。たくさんの命を奪ってしまった。だから……しあわせになんて、なれない」

彼女の優しさは分かる。

自分のしあわせを投げ出したくなる気持ちも分かる。

けれど、それでも。

フェイレイの一番の望みは、リディルと一緒にこの世界でしあわせに生きることだ。

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