Faylay~しあわせの魔法
すっかり夜が開けて、太陽の光が瓦礫と化した都を照らし始めた頃。
「いたぞ! 『勇者』殿たちだ!」
フェイレイを探していた兵士たちが、瓦礫の中で蹲る彼を発見する。
何も言葉をかけられず、ただ傍らに寄り添っていたヴァンガードは、その声に顔を上げ、立ち上がった。
「ご無事でしたか! いや、酷い怪我だ。すぐに救護班を手配!」
兵を率いる将校の声に、一般兵たちがわらわらと動き出す。
それでもまったくフェイレイは動く気配がない。
そっとしておいてあげたくて、ヴァンガードは兵士たちを止め、少しの間待機してもらえるように頼んだ。
しかし離れたとことからフェイレイを見守る兵士たちの興奮は収まらず、次々と彼を褒め称える声が聞こえてきた。
「しかし本当に凄かった! あの力は精霊王のものであったのだろうか」
「そうでしょう! 惑星王以外で精霊の王を召喚できるなど、見たことも聞いたこともない!」
「あの方は本当に『勇者』だ。世界の救い主だ!」
兵士たちの賞賛の声は、やがて皇都を包み込み、海を越えて世界中に広がっていくだろう。
それでもフェイレイは顔を上げなかった。
あれほど望んでいた称号。
それを目指して今まで生きてきた。
命を懸けた戦闘を何度も潜り抜け、やっと辿り着いた場所。
けれどそこには何もなかった。
一番大切なものを護れなかった彼には、地位も名誉も、何の意味もないものだった。
残されたのは、深海色の瞳から零れ落ちる哀しみの涙だけ。
「俺は『勇者』なんかじゃ、ない……!」
朝日の眩しい光に照らされながら、フェイレイはひとり、闇の中を彷徨い続けた。
「いたぞ! 『勇者』殿たちだ!」
フェイレイを探していた兵士たちが、瓦礫の中で蹲る彼を発見する。
何も言葉をかけられず、ただ傍らに寄り添っていたヴァンガードは、その声に顔を上げ、立ち上がった。
「ご無事でしたか! いや、酷い怪我だ。すぐに救護班を手配!」
兵を率いる将校の声に、一般兵たちがわらわらと動き出す。
それでもまったくフェイレイは動く気配がない。
そっとしておいてあげたくて、ヴァンガードは兵士たちを止め、少しの間待機してもらえるように頼んだ。
しかし離れたとことからフェイレイを見守る兵士たちの興奮は収まらず、次々と彼を褒め称える声が聞こえてきた。
「しかし本当に凄かった! あの力は精霊王のものであったのだろうか」
「そうでしょう! 惑星王以外で精霊の王を召喚できるなど、見たことも聞いたこともない!」
「あの方は本当に『勇者』だ。世界の救い主だ!」
兵士たちの賞賛の声は、やがて皇都を包み込み、海を越えて世界中に広がっていくだろう。
それでもフェイレイは顔を上げなかった。
あれほど望んでいた称号。
それを目指して今まで生きてきた。
命を懸けた戦闘を何度も潜り抜け、やっと辿り着いた場所。
けれどそこには何もなかった。
一番大切なものを護れなかった彼には、地位も名誉も、何の意味もないものだった。
残されたのは、深海色の瞳から零れ落ちる哀しみの涙だけ。
「俺は『勇者』なんかじゃ、ない……!」
朝日の眩しい光に照らされながら、フェイレイはひとり、闇の中を彷徨い続けた。