Faylay~しあわせの魔法
その後徐々に天候は安定し、外に出た人々は瓦礫と化した花の都に落胆した。

だがそれだけでは終わらない。

人々は協力し合い、自分たちの都の再建へと乗り出したのだ。


あれから三ヶ月。

人々の努力によって街もだいぶ復興してきたが、その間カインは一度も目を覚ましていない。

何年もの間魔王の力を抑えてきたのだ。一体どれだけの精神力が必要だったのか、想像もつかない。

もともとほっそりとしていた顔も身体も、見るに耐えないほどやせ細ってしまっていた。

頬を撫でていた手を彼の手にやり、そっと握り締める。

「カイン……貴方に叱られても、私は貴方を惑星王でいさせるわ。だって、貴方ほど民を愛している皇は、いないのだもの……」

握り締めた細い手を、自分の頬へと寄せる。

「こんな姿になってまで護った民のもとへ、帰ってきてちょうだい……」

そして、私のもとへ。

そう心で言葉を繋いだとき、病室のドアがノックされた。

「はい」

返事をすると、自動ドアがスライドして護衛官が顔を覗かせた。

「失礼します、陛下。ヴァンガード=ユウリ=エインズワース様がお見えになりました」

「お通しして」

「はっ」

ややあって、懐かしい水色の髪の少年が顔を覗かせる。

「お久しぶりです、陛下……」

「ローズさん、でよろしいのですよ」

「そういうわけには参りませんよ。もう……身分を隠して旅をしているわけではないのですから」

ヴァンガードは少しだけ困ったように微笑み、中へ入ってくる。

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