Faylay~しあわせの魔法
「惑星王のご容態はいかがですか?」

民から毎日送られてくるという、見舞いの美しい花で囲まれた病室を足音を立てないようにそっと歩き、ローズマリーの傍まで歩み寄る。

「相変わらず……ですわ。特に外傷があるわけではありませんけれど、心を使い果たしてしまったのでしょうね。このまま目が覚めない覚悟も必要だと言われました」

「……でも、惑星王は強いお方ですから、きっと!」

穏やかに微笑んでは見えても、きっと辛い想いをしているのだろうと思い、ヴァンガードは励ましの言葉をかける。

「ありがとう」

ローズマリーの微笑みは美しい。

それがかえって痛い。

ヴァンガードはきゅっと眉根を寄せた。

そんな彼の気遣いを感じ、ローズマリーは外へ視線をやる。

「外の様子はどうかしら。今日は久しぶりに晴れましたけれど」

「ええ、良い天気ですよ。みんな洪水の後片付けに出かけています」

「……あの子……フェイレイくんは?」

「みんなと一緒です」

「そう。……元気、かしら」

「……ああいう性格の人ですからね」

ヴァンガードは苦笑を漏らした。

「人に心配されるような顔は、しませんよ」

そう言ってローズマリーと同じく、窓の外を流れていく白い雲を見上げた。


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