Faylay~しあわせの魔法
また、建設中の建物の足場が崩れ、下にいた人たちが巻き込まれそうになったときも、剣圧で瓦礫を吹き飛ばし、人々を護ったりもした。

そういう人助けばかりしていたため、本人がどんなに『勇者』なんかじゃない、と否定しても、みんなフェイレイを『勇者様』と呼んだ。

「軍からの褒章も受け取らなかったんだろう?」

「そうだよ。勇者じゃない、特別なことなんかしてないって言ってさ」

「この間も身を挺して子供を庇ってくださったんだよ」

「なかなか出来ることじゃないよねぇ」

「やっぱりあの方は『勇者様』だよ」

「うんうん、そうよね。あの笑顔が、また素敵で……」

「見てるとワシらも元気が出るわい」

街の復興を始めた人々にとって、『勇者』の存在は大きかった。彼のおかげで士気が高まっていると言っても過言ではない。

みんなフェイレイを頼りにしていた。

みんながフェイレイを見ていた。

だから彼も、それに応える。

自分が頑張ることで、人々が頑張れるなら。

この『偽りの笑顔』なんかで、みんなが元気になれるなら──と。



一仕事を終えて休憩していると、同じく休憩している人々からこんな声が聞こえてきた。

「海も空も落ち着いてきて、ようやく船が出せるそうですよ」

「それは良かった! 俺は娘を北へ嫁に出しているんだが、なかなか連絡がつかないので心配していたところだ」

「それは心配だな。さっそく船会社へ問い合わせてみるといい」

「ああ!」

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