Faylay~しあわせの魔法
透明なドレスとサラサラの長い髪を風に靡かせ、踊るような軽やかさで舞う小さな精霊たちを横目に、フェイレイは余裕の表情だ。

「大丈夫、リディルだから」

笑顔のまま全身に叩きつける風を受け止める彼に、風の精霊グィーネたちが呆れたように、しかし楽しそうに囁く。

《精霊士<マスター>のお力に感謝するのだな》

「もちろん」

グィーネたちに護られ、降下スピードは緩まっているとはいえ、みるみる尖った緑の森が近づいてきて、フェイレイは大きく広げていた手足を縮めて着陸態勢をとった。

目のつく限り一番背の高い木に目標を定めると、猛スピードで針葉樹林の合間に急降下し、ザ、とブーツの底を木の枝に引っ掛けた。

瞬間、目の前に黒い影が飛沫のように広がる。

「出たな」

大きくしなる枝を利用し、高くジャンプしながら腰の後ろに下がっている鞘から剣を引き抜く。それは、カシャン、カシャン、と軽い音を立てて変形する。

剣は鞘に納まっている間は邪魔にならないように折りたたんであるが、鞘から抜いて軽く力を加えると変形する、可変式だ。

自分の身長より頭ひとつ分短い長さの剣を両手で持ち、上段に構える。

そしてそのまま一気に黒い影を真っ二つに引き裂いた。


ヒアアアアアア……


声にならない、高い風のような悲鳴が森の中に木霊する。

飛び散る影は、昇り始めた朝の光に晒されると、チリチリと焼けるように消えていく。

「任務、完了! っと」

剣を鞘に収め、フェイレイは笑顔を城の方へと向ける。
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