Faylay~しあわせの魔法
「海を渡れるのか……」

そう聞いてまず思い浮かぶのは、故郷のセルティアのことだ。

天候不順でずっと皇都に足止めを喰らっていたが、セルティアのことが頭から離れた日はなかった。

星府軍の攻撃、魔族の攻撃、更に追い討ちをかけた自然災害。とても無事だとは思えなかったが、どうなっているのかこの目で確認したいところだ。

この街がもう少し復興したら、渡ってみようか……。

そんなことを考えながら歩いていると、いきなり首に腕を回された。

「よう、フェイレイ。どうした、暗い顔して」

キャプテン・ブラッディだった。

彼や海賊たちもこの都に足止めされ、街の再建に手を貸していた。

「あ、いや」

フェイレイはバチン、と頬を叩く。そして笑顔を作った。

「なに?」

見上げるフェイレイに、ブラッディはあからさまに不機嫌な顔になり、赤髪のてっぺんに拳骨を落とした。

「イテッ! なんだよー!」

「別に」

ブラッディは口をへの字に曲げ、それからフェイレイの背中をビタン、と叩いた。

「皇城周辺の街はだいぶ綺麗になったぞ。船も通れるようになったおかげで商人が流れてきた。お前さんも行ってみれば? たまには気晴らしでもして来いよ」

「いや、俺は……」

「なんなら、俺が案内してやろうか。夜の街も、なかなか良いものだが……」

ニタリと微笑む隻眼の船長に、フェイレイは顔を引きつらせた。

「遠慮しておきます。昼間の健全な時間に遊びに行かせていただきます」

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