Faylay~しあわせの魔法
「久しぶりだなぁ、兄ちゃん! お互い生き残ったねぇ、頑張ったねぇ」

「あんたはなんで皇都に……」

「そりゃあ、今は皇都が一番景気がいいって言うからさぁ。海を渡ってきたのよ」

フェイレイはハッとした。

この人はセルティアにいた人物だ。もしかしたら、セルティアの人たちも元気にしているのでは……。

「あんた知ってるか! セルティアの人たちが今どうしているか!」

飛び掛るようにして聞くフェイレイに、露店主はサングラスの奥で目を丸くした。

「い、いやぁ、それが、セルティアが星府軍に襲われる前に、北に渡っちゃったんだよぅ。だからセルティアのことは分からないよ。すまないねぇ、役に立たなくて」

「……そっか。うん、いいんだ、ありがとう」

少しだけ気落ちした様子のフェイレイに、露店主は気の毒に思ったのだろう。

「兄ちゃん、ちょっと待ちな!」

立ち去ろうとするフェイレイを呼び止め、指輪がいくつも並べられたガラスケースを差し出す。

「兄ちゃん、どれでも好きなの選んじゃってぇ~。この間のかわいい彼女さんに持ってきなよぉ」

「え……」

「遠い東の地で出会ったお客さんにまた逢えたのも何かの縁だよ。どれでもプレゼントしちゃうよぉん。他のお客さんには内緒だけどねぇ」

露店主は笑顔でガラスケースを差し出す。

太陽の光を浴びてキラキラ輝く金や銀の指輪たちをしばし眺め。

「……いや、いいよ」

フェイレイは小さく笑みを浮かべ、やんわりと断った。

< 703 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop